多重即発ガンマ線分析法(MPGA)を用いた微量元素分析


研究の背景

微量元素の定量法にはICP、XPS、AAS、加速器質量分析法など、それぞれ優れた特徴を持つ分析法が存在します。しかし、試料 の物理的状態(非破壊)、目的元素、必要な測定精度・測定時間等によっては、現存するいかなる測定法を用いても分析が出来な い場合もあります。個々の検出法の改良によってある程度は検出限界・測定精度等が改善されてきてはいるが、農産物・考古学試料・ 隕石・高付加価値金属等の貴重試料、リサイクル製品中のトランプ元素等など、全く新しい分析法の開発によるブレークスルーが 必要とされています。多重ガンマ線検出器を用いた即発γ線分析(MPGA)はその有力な候補の一つとして期待されており、同手法 のさらなる高度化とそれを用いた宇宙・地質・環境分野等における研究が望まれています。

研究の目的と意義

 平成15年度にJRR-3冷中性子ポートが改修され、多重ガンマ線検出器を用いた即発γ線分析装置をこの新設されたポートに設置しました。 外部予算の獲得に成功し、ハード面での装置開発を行い、その間、いくつかの種類の試料に対しても新しい分析法を適用し てその実用性を評価することができました。本研究では多重即発ガンマ線計測法を用いたMPGA装置をさらに高度化(バックグラウンドを 従来の1/3以下、ソフトウェア整備等)すると共に、分析手法を確立しました。また、実際の試料に適用しこれまで利用されてきた分析 法との比較を行い、効率性・信頼性を多方面から評価しています。
多重即発ガンマ線検出装置MPGA

実験の概要

環境試料、宇宙・地球科学的試料、工業・農産物試料、標準物質等の測定を行い、既存の分析法との比較、試料毎の精度・検出 限界・補正効果等を評価しています。また、それらの実試料の測定結果から、学術的、実践的考察も行う。 装置の高度化においては、ビームラインの改良によるS/N改善、オンライン解析ソフトウェアの実試料を用いた検証、検出器及び データ収集系開発、データベース整備と検証等を行なっています。

JRR3改造20周年シンポジウム用ポスター

参考文献はこちら