近年の核セキュリティ及び中性子科学等でのHe-3ガスの需要増大と核軍縮に伴うHe-3ガスの供給不足による需給バランスの変化により、標準の中性子検出器用ガスであるHe-3ガスの価格が高騰し、その供給量も不足するいわゆる世界的な「He-3クライシス」問題が起きています。
この状況に対処するため、原子力機構では大強度陽子加速器施設J-PARCを始め研究用原子炉JRR-3やJRR-4での中性子散乱研究等におけるイメージング用中性子検出器として開発実績のある(ZnS/10B2O3)セラミックシンチレータを用いた代替中性子検出器を開発しました。
当研究グループでは、開発した代替検出器の性能が保障措置分野でも十分に適用可能であることを確認、実証するために、He-3ガス中性子検出器が使用されているパッシブ中性子法を用いた米国製の大型のMOX燃料のPu用非破壊測定システムであるプルトニウム貯蔵容器測定システム [Plutonium Canister Assay System (PCAS)] と小型のPuインベントリ評価用測定装置 [Inventory Sample Neutron Coinsidence Counter (INVS)] の代替測定装置としてAlternative Plutonium Canister Assay system (APCA) とAlternative Sample Assay System (ASAS) をそれぞれ設計開発し、代替中性子検出器を用いて製作しました。
開発の結果、APCAについてはシミュレーションではPCAS同様の設計性能が得られました。また、ASASに関してはINVSとの比較試験の結果、中性子検出効率はINVSの半分程度でしたが測定値の総合不確かさはINVS以下の値となり保障措置分野の査察機器としての性能を満足することが確認でき、今後の査察機器への適用の見通しが得られました。また、このような保障措置の査察に使用される非破壊測定装置を純国産技術で開発できることを実証しました。