中性子は物質に照射されると、散乱や中性子捕獲、核分裂などのさまざまな原子核反応を引き起こします。こうした反応は、材料の性質や形状に応じて複雑に変化し、医療・分析・安全保障など幅広い分野で活用されています。そのため、中性子が物質中でどのように振る舞うかを正しく理解することは非常に重要です。
本研究では、中性子をよく散乱する物質(例:水素)に着目し、中性子のエネルギー変化が物質の密度にも依存することを明らかにしました。従来は中性子のエネルギー変化は散乱物質の「量」によって決まると考えられていましたが、複数回の散乱を考慮すると、「密度」も大きな要因となることを発見したのです。
この成果は、核テロ対策に用いられる非破壊測定装置や、元素分析の高精度化に貢献するほか、密度を制御することで中性子のエネルギーを効率的に低下させる新たな中性子遮蔽材の設計指針としても活用が期待されます。