次世代医療を支えるアルファ線核種の可視化技術

α線内用療法は、正常組織への影響を最小限に抑えながら、がん細胞を選択的に攻撃できる次世代の放射線治療法として注目されています(図1)。この治療では、211At(アスタチン)などのα線放出核種を体内に投与しますが、その効果を最大限に引き出すためには、投与前に薬剤の化学形や放射能を迅速かつ正確に評価する必要があります。

しかし、従来の分析法では、分析に時間がかかるうえ、化学形と放射能を別々の装置で測定する必要があり、効率が悪く、作業空間や被ばくリスクの問題もありました。

この課題を解決するために、薄層クロマトグラフィー(TLC)、α線シンチレーターおよび高感度カメラを組み合わせた新しい分析システム「NuS-Alpha」を開発しました(図2)。

NuS-Alphaは、TLCで化学形ごとに分離された薬剤中のα線を可視化し、化学形と放射能を同時かつリアルタイムで測定できます。
この技術により、

  • X線などの妨害を受けずに分析可能
  • 感度が従来の約200倍に向上
  • 分析時間を1/40に短縮
  • コンパクトで省スペース、医療現場への導入が容易

といった大幅な性能向上を実現しました(図3)。これにより、貴重な薬剤の無駄を防ぎ、作業者の被ばくリスクも低減できます。

この分析システムは、製品化して販売しています(図4)。211Atを用いたα線内用療法の実用化を後押しするとともに、今後は他の放射線治療法や環境モニタリングなどへの応用も期待されています。

図1: RI内用療法概念図
図1: RI内用療法概念図
図2: α線内用療法薬分析システム(NuS-Alpha)概念図
図2: α線内用療法薬分析システム(NuS-Alpha)概念図
図3: 従来技術と新技術の感度比
図3: 従来技術と新技術の感度比
図4: α線内用療法薬分析システム(NuS-Alpha)
図4: α線内用療法薬分析システム(NuS-Alpha)

詳しくは、以下の論文をご覧ください。