ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、中性子線を用いた新たながん治療法です。
一般的な放射線治療法では、低LET放射線であるX線を用いるのに対し、BNCTでは、患者さんへ投与されたホウ素薬剤によりがん細胞に特異的に集積した10Bと、外部から照射された中性子との核反応により生じるα線と7Liイオンを用いて治療を行います。
この反応で生じるα線と7Liイオンは、体内でいずれも細胞の大きさと同程度の飛程をもち、高い生物効果を示すことから、BNCTでは、周囲の正常組織へのダメージを抑えつつ、がん細胞を選択的かつ効果的に破壊することができます。
以前は、中性子源として原子炉を用いたBNCTが行われていましたが、近年の急速な加速器技術の進歩に伴い、現在では、病院へ併設可能な陽子線加速器と中性子発生用ターゲットからなる加速器駆動中性子源の利用が主流となっています。
患者さんにとって安全かつ有効なBNCTを行うためには、中性子源装置の品質保証・品質管理(QA/QC)を高い精度で行うことが重要です。
一方、BNCTに携わるスタッフたちが抱えるQA/QC業務の負担軽減も重要な課題となります。
そこで、我々のグループでは、BNCT用中性子場において高精度かつ簡便な中性子測定を可能とする中性子検出器として、小片状シンチレータと光ファイバを組み合わせたリアルタイム中性子モニタの開発を進めています。