世界的に核テロのリスクが高まる中、空港や港湾などにおける核物質検知の重要性が増しています。私たちは、従来の大型・高価なアクティブ型検知装置に代わる、安価で可搬性に優れた低コスト可搬型核物質検知装置(NuS-RIM、図1)を開発しました。
この装置では、中性子を発生させる放射線源(252Cf)を高速で回転させることで(図2)、核物質が存在するかどうかを非破壊で検知できます。特に、核分裂反応で生じる中性子の“時間差”に着目し、高速回転時にのみ現れる強度の変化から、核物質の有無を高感度に判別する新しい手法を確立しました(図3)。
試作機による実証実験では、57グラムの235Uを検知することに成功しました。また、コストを約1/10に抑え、小型化とRI許認可不要の運用も実現しています。
本技術は、運輸施設やイベント会場でのセキュリティ強化に貢献するとともに、核テロ抑止のための実効的な手段として期待されています。
以下の表は、従来型の核物質検知装置と、実用化を行っている低コスト・可搬型核物質検知装置を比較したものです。
従来装置(FNDI法) | 低コスト可搬型核物質検知装置(NuS-RIM) | |
コスト | 7,000万円以上 | 約600万円(手荷物X線検査装置と同程度) |
大きさ | 大型(可搬性無し) | 小型(可搬性あり) |
RI許認可 | 必要 | 不要(表示付認証機器) |
被曝 | 測定時に退避が必要 | 退避の必要なし |